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やってくれたな、巻き込み婚

last update Last Updated: 2025-04-06 08:11:14
「確かにくだらないことしてたけど、邪魔はしたくないんだ。本当に。とにかく、俺はお前のハマりっぷりを鑑賞していただけだし!」

「ほう……

「見てたのは謝るから、俺を巻き込まないでくれ。俺はそんな風に役作って成り切れるような人間じゃないから! 演技力ゼロの下手くそを取り込んで、お前たちの世界観をブチ壊さないでくれ!」

「……風の精霊、コイツの本音をぶちまけてくれ」

「このまま誰かに見られて、俺まで変人扱いされたくない――っ! ……ハッ、口が勝手に……?!」

うっかり言うまいとしていた本音が口から出てしまい、俺の全身から血の気が引く。

ゴメン圭次郎。俺、お前のガチ寸劇は好きだけど、変人認定は嫌だ。

下手したら友だちなくしたり、問題児扱いされて大学受験にも影響出そうだし。

怒りでしかめっ面になっていた圭次郎の顔が、急に不穏な笑みを浮かべた。

目が据わっていて、今にも何か仕掛けてきそうなヤバさを感じずにはいられなかった。

「坂宮太智……お前の本音、しかと聞いたぞ。ここまで俺を不愉快にさせる存在がいるとはな……許せん」

うわぁぁ、本気で怒ってやがる……そうだよな、誰だって変人扱いされたら怒るもんな。

でも朝から晩まで徹底して王子様キャラになり切って、授業中まで戦闘ごっこしてたらそう思っちゃうだろ! 俺は悪くない。うっかり目撃してるのがバレただけの被害者だ。

もう気まずくなるの覚悟で、突き飛ばして圭次郎から逃げるしかない――俺が腹を括りかけたその時。

「すべての精霊に告ぐ……今この瞬間の証人となり、婚華の祝福を我らが手に宿したまえ」

いきなり圭次郎が左手を上げて呟くと、その手に一瞬閃光が走る。

そして掴んでいる俺の手を強引に持ち上げ、薬指に何かを捻じ込んできた。

その手は左――指の付け根に金色の指輪が輝く。

合わせたように、圭次郎の左手薬指にも同じ指輪がはまっていた。

「さあ、これでお前も俺と同じ側の人間になった」

「ど、どういう意味?」

「後ろを見れば分かる」

言われるままに俺は振り返る。

今まで何もなかったハズなのに、辺り一面に広がる白煙。

フワフワと浮かぶ、色とりどりに淡い輝きを放つ野球ボールほどの光球。

圭次郎から伸びていている、火で編まれた鎖。

それは煙の中でぎこちなく動こうとしている、極彩色な洋風の甲冑を着た男を縛り付けていた。

まさかこれ、圭次郎が今まで見
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